4月3日、南アフリカの白人至上主義の政党リーダー、ユージーン・テレブランシュ氏(Eugene Terre Blanche)が殺害された事件が、国内外のメディアで大きく取り上 げられている。テレブランシュはアパルトヘイト時代に成立されたAfrikaner Weerstandsbeweging党(AWB:アフリカーナー抵抗運動党)の党首で今年69歳。ノースウェスト州の自宅の農場 で、雇い人2人と賃金の支払いを巡って争いになり、雇い人にノブキリ(先にコブがついた杖)とナタで殺された。AWB党は 南アフリカの民主化後も分離主義をつらぬき、国内に白人アフリカーナーの自治区/国の設立を求める運動を展開しており、人種融和をはかる現在の南アフリカ では過激主義者として見られているが、それでもアフリカーナーの支持者が5000人ほどいるとのことだ(Wikipedia) 。テレブランシュは黒人に対する暴力や殺人未遂により数年間投獄された経験があるが、今回彼の殺害を巡って も、日ごろから雇い人に対して手荒い扱いをしていたという報道がある。
南アフリカでは白人農場主殺害がしばしば起きており、AWB党によれば、その数はテレブランシュで3100人(おそらく民主化後のトータル数)に達するそうだ。2008-2009年の1年間に18,148件の殺人 が起きている南アフリカでは、農場主殺害事件もかすんでしまうが、国内の白人農場主コミュニティーでは、テレブランシュ殺害はコミュニティー内に高まる不安に拍車をかけた様相を呈している。被害に遭った白人農場主に対しては心が痛むが、その背景にある南アフリカの人種差別の歴史とその後遺症を考えると、殺害がやまらない のは理解できる。Terre Blancheは黒人住民に対する乱暴な態度で悪評が高かったが、私の周囲でも、白人の黒人に対する差別と暴力的な態度は時々見られる。多国籍で民主化の意識が高い都市部でこうであるから、よりコンサバティブな農村地域で は、人種間の確執も残存しやすい。さらに、農場労働者は一般的に賃金が低く、雇い主の都合で支払いが不定期になったり、額が減ることもある。テレブランシュの殺害者も、1か月の賃金300ラントほど(40USドルくらい)を巡って争ったらしい。農場では住まいが支給されるとはい え、パン1斤が7ラント(US1ドル)の南アフリカで、月300ラントは相当に低い賃金である。
テレブランシュ殺害事件が大きく取り上げられるのは、南アフリカの土地問題があるためでもある。南アフリカでは民主化後も大農場主の多くが白人のままである。土地の黒人農民への再分配はほとんど進んでいない。農場主や白人住民が恐れるのは、南アフリカが「第二のジンバブウェ」となることだ。近年南アフリカでは土地強制徴収の法制化が提言されたり、与党青年団による鉱山の国有化が提言されたりしている。このままではジンバブウェ白人と同じように、農場から追い出され、鉱山や企業を黒人政府に徴収されるのではないか、という不安が南アフリカ白人住民の間に高まっている。ジンバブウェで白人経済の崩壊を目の当たりにした私の経験からすると、残念ながら、南アフリカが第二のジンバブウェへと向かう日は遠くなかろうと思う。私が会うジンバブウェ人のほとんどが、南アフリカもジンバブウェと同じ道をたどる と確信している。与党ANCの青年団リーダー、ジュリアス・マレマ氏(Julius Malema)が、アフリカーナーを 殺せという意味の抵抗運動歌を歌ったり、ジンバブウェの土地占拠や土地改革を誉め称えたりして南ア白人住民の顰蹙をかっているが、マレマの支持者は低所得層に多くいる。ANC党はマレマに対し、人種差別的発言を控えるようにと忠告しているが、徹底的な対処法をとらず、マレマを野放しにしている状況で、結局はマレマを支持しているようにも見える。マレマの存在は、低所得農民を扇動し、農場を不法占拠していったジンバブウェの退役軍人組織のリーダーたちの存在に似ている。退役軍人組織も、初期にはジンバブウェ政府に咎められたものの、後に政府の積極的な支持を受けるようになったものだ。
過去の植民地支配と人種差別の記憶が、ジンバブウェの独裁大統領ムガベが、ジンバブウェ国内のみならず、アフリカ各地で支持者を集める要因の ひとつである。「旧植民者(白人)は我々から土地を奪った。今度は彼らから土地を奪い返すのだ。」という思想は、黒人住民に説得力を もってアピールし、住民を動かす。例え経済状況が極度に悪化しても、土地占拠の熱狂的な支持者が続出する。やはり南アフリカは、ジンバブウェと同じ方向へ向かって いるのだろうか。南アフリカでは白人経済力が圧倒的であり、土地収用や国営化政策は経済へのダメージが大きくなりすぎる為、南アフリカ政府はジンバブウェ化の方向へは走らないだろうと思われるかもしれない。そうであればよい。しかし、ジンバブウェでも同じ議論が交わされ、結局経済は10年も崩壊したままである。
南アフリカは、他のアフリカ諸国と同じように、独立/民主化後の経済崩壊への道をたどるのか、それとも別の道を開拓することができるのだろうか?




ここ数日、夫が会った白人の友達は、たいていテレブランシュ殺害と南アフリカの将来への不安について語るらしい。
極端な右翼のAWB党を、多くの白人は大っぴらには支持していなかったけど、心の中では、テレブランシュの白人至上や分離主義に同意する気持ちがあるのだろう、、、。
テレビ殺害が起きた地区では、人種間の暴力などは起きていないが、テンションはやや高いとのニュース報道も。
殺害者の裁判が始まった裁判所外では、白人の集団がアパルトヘイト時代の南アフリカ国家を歌い、それを聞いた黒人住民の集まりが、民主化後の国家を歌ったそうだ。
そして何かのきっかけに、白人住民が黒人側に水を引っかけたため、危うく争いになりかけたとのこと。
マンデラが提唱した人種融和の努力が、、、
2日前に南アフリカから帰国しました。
このニュース、新聞などで毎日報道されててこれからどうなっちゃうんだろう・・って心配してました。
日本ではほとんど報道されてないようですが。
私がいつもいるダーバンでは、それほど危機感を持ってなかったのだけど、ジンバブエの状況をずっと見てきているアユミさんが、南アフリカが第二のジンバブエに・・・と、おっしゃられるとリアルに感じますね。
これからどんなきっかけで、大きな騒動に発展するかわかりませんね。
アユミさんも巻き込まれたりしないよう、どうぞお気をつけください。